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巻十四　恋歌四　　六百七十七番　〜　七百四十六番

プレゼントの効果（巻第十四「恋歌四」）

七百四十六番　　よみ人しらず　　
形見こそ今はあたなれ　　これなくは　　忘るゝ時もあらましものを

（口語訳）

あなたの形見の品こそ今となっては私を苦しめる仇ですわ。形見がなかったらあなたを忘れるときもあるはずなのに・・・

（柏木の思ひ）

「形見こそ今はあたなれ」と二句切れできっぱりと「よみ人しらず」さん、別れた恋人を振り切ろうとしたんです。「こそ」とありますから、かなり強い決心なんです。決心してみると、あれこれと男がプレゼントしてくれたものが今となっては男の「形見」となって疎ましく思えるんですね。

でも、だめなんです。反実仮想の助動詞「まし」が「よみ人しらず」さんの本心を表しています。忘れようとしてもだめなんです。形見の品を見つめたり、握り締めたりしてあの人を忘れることなんてできないんですから。

これがプレーボーイの手口。プレゼントや甘い言葉って、確実なものとして女性の心に残るんですよね。浮気男と軽蔑されても具体的なもので女性に迫ることが、愛を勝ち取る早道なんでしょうか。「男は黙って・・・」なんていう堅物って結局はだめなんですよね。

小生も女三の宮様への接近の仕方をもう少し工夫すればよかったな。プレゼントもしないで一直線だったから。死んでしまうのも当然ですよね。トホホホホホホホ・・・

（２０１２．１．２１）

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