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巻十三　恋歌三　　六百十六番　〜　六百七十六番

恋多き女とは（巻第十三「恋歌三」）

六百七十六番　　伊勢　　　
知るといへば枕だにせでねしものを　　塵ならぬ名のそらに立つらむ

（口語訳）

枕は、秘密を知るというので、枕さえしないで手枕で寝たのに。どうして、塵でもない噂が、塵のように空に立ち上るように高く立ち上ってしまったんだろうか。

（柏木の思ひ）

伊勢さんって、百人一首にも選ばれた方ですので、皆さんよくご存知のことと思います。宇多天皇やその皇子にも愛された恋多き情熱の歌人で有名です。

この歌にも彼女の情熱の片鱗が伺えます。忍ぶ恋が露顕しないようにと工夫して、枕をしないで、手枕としたのに、どうして、噂が立ってしまったんだろうかと理屈っぽく訝っているところは、流行のスタイルです。貫之さんや、躬恒さんの歌なんかともつながっていますよね。

でも、伊勢さんって、その枠の中には納まらないんですよ。「枕だにせでねしものを」という言葉、慎み深く露骨なことを極力避けた私達の時代の女性が口に出せる言葉ではありません。しかし、伊勢さんって、あっけらかんと言っちゃうんです。この言葉、恋人との逢瀬のエロティシズムを誇らしく詠っているんです。露骨ではない、日常の言葉を使用しているだけ余計にイメージは膨らんでしまうんです。和泉式部さんや与謝野晶子さんにも共通するのでしょうか。

昨夜、ＮＨＫのＢＳで「人間の条件」第３部を見ました。ヒローインの美千子さんが主人公の梶の前で裸になるシーン。心の強さ、かわいらしさ、優艶さなど、女性の美しさが伝わってきました。

（女性を無視した、男性の勝手な妄想なのでしょうか？？　小生、反省しなくっちゃ）

（２０１１．８．１８）

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